2011/06/15

高井良勝さん

話者:
勝妙院 高井良勝住職
高野山・真言宗
金峯山・修験本宗
住職であり、山伏であり、さらに御嶽教の神主でもあられます。

インタビュアー:ゴトウ○○ト、やま○○まさき

Q.今までで一番ハッピーだった日はいつですか?
(選ぶとなると、難しいけれど、) 大学を卒業したときです。 もう勉強しなくていいと思ったから。うれしい、というよりもほっとしました。

こどもが生まれた時もうれしかった。ぜひ出産に立ち会ってください。感動すると思います。

うれしいことはいっぱいある。

勉強がいやで、住職にもなりたくなかったけれど、高野山で真言宗を学び、また、修験道がおもしろく、考え方が変わりました。 亡くなった人のためだけの葬式・法事ではなく、生きている人がいかに幸せに生きていくか、ということに関れるからです。


Q.大学を卒業して、すぐに住職になられたのですか?
祖父も父もおり、住職が多かったので、5年ほどいろいろな仕事をしていました。土方やバーテンダー、警備会社・・・の仕事をしました。住職の中では珍しいのではないですか。 いい勉強になりました。

先代の後を継いでからは、自分の方法でやろうとすると、信者さんから「先代は違った」と言われました。 自分のやり方ができるようになるまで、10年から15年ほどかかりました。


Q.現代の地域社会や家族についてどう考えておられますか?
家族については、大家族であるべきだと思います。 3世代同居等の大家族であれば、世の中がうまくいくと思う。 例えば、保育所が満員でも祖父母が世話をすることができる。 子育てに悩んでも、祖父・祖母の協力が得られる。 一つ屋根の下に住むので、家賃支払も少なくなる。

(インタビュアー達は住職と接する機会がないというのは、) 今は、子どもは大人になると、家を出てしまうので、お寺の方とも接する機会が少ないのでしょうね。 地域については、ここ相川はコミュニティや近所付き合いは盛んであると思います。


Q.今の10代から20代の若者へのアドバイスは?
(若者へのアドバイスというよりは、大人への意見として、) 地域社会については、近所の大人は子どもを叱るべき。 悪そうにつるんでいる子どもも、一人一人は普通の子です。 もっと大人が子どもに関るべきだと思います。 大人は、近所の子どもと顔見知りになればいい。そうすれば、もっと近所の子どもと関れます。 今の子どもは一人で行動する強さがないとも思うが、それよりも、今の大人が子どもを避けている、ということが重要です。

子ども会に関っているので、まちの子どもはほとんど知っています。 バーベキューをしたときは70人の子どもが集まりました。 (その時は、延々と焼きそばを焼き続けて大変でした。 それ以来バーベキューはしていない。)

また、お寺は地域のコミュニティーの中心であるべきとも思います。 昔は寺子屋など、お寺が地域の子どもを集めて関っていました。 近所にジャグリングの名人がいますが、子どもはボール3つのジャグリングなら10分~15分でできるようになるらしい。

時には、中高生でも水子の霊を拝んでくれという子もやってくる。 世間的にはいけないことをして、というが、「子どもをおろすというのは人を殺しているんやぞ」と叱るけれど、そうやって、拝んでくれとやって来る心があるのはええやないか、と思います。


Q.高井さんからは強さや器の大きさを感じます。
今回のインタビューを引き受けてくださったことからも器の大きさを感じます。
それらは、どうやって身につけたのですか?
よく「超アグレッシブ」と言われます。 ぼくのポリシーは「石橋は走って渡ろう」です。 もちろん走って渡ったら、橋が崩れることもあるかもしれないが、そのときのために、 川を泳いで渡れる強さは鍛えて身につけている。 とにかく、全力で行きましょう、と思っています。

子どもの頃は、身体が弱かった。二日に一度、熱を出して寝込むくらい。それが、部活でブラスバンドに入って、肺活量など身体が強くなった。 その後、ラクビー部に入り身体が強くなった。 こわいヤンキーの兄ちゃんにも、こちらから話しかけたら大丈夫だと知り、精神的にも強くなりました。

また、(強さや大きさは)職業上の必要性もあると思います。 信者さんにはこちらから「どう?」と話しかけていくことが大事だから。 成長していく中で、こちらから話しかけていくということを大事にするようになりました。

また、子どもの頃は、山伏の父親に連れていってもらったのは、ほとんど山だった、ということもあります。 父親の修行と仕事の一環として、山ばっかりで、子どもの頃の写真も山の中ばっかり。


一問一答
Q.座右の銘は?
石橋は橋って渡ろう。
アグレッシブに、振り向かない。

Q.座右の書は?
決められない。
(お勧め書は内緒で教えていただきました。)

Q.尊敬する人物、目標とする人物はおられますか?
弘法大師空海と、それから父親です。 今の人生を悪くないって思っていますが、その今の自分の基礎を作ってくれたのは父親ですから。

他に、矢沢永吉。以前はバンド活動もやっていました。

Q.一番の健康法は?
楽天家でいること。絶対に後ろは振り向かない。良くても悪くても。 苦しいという気持ちを残さない。苦しい思いをして山を登っても、その後、きれいな景色をみたら苦しいという思いが消える。また、苦しい修行をしているから、普段が楽に暮らせるということもある。

プライベートの時も、仕事の時も同じ。 自分の生き方に自信があるわけではないが、 生き方に確信を持とうとしています。

(インタビューここまで)
 
 
普段着の自分の写真の方が、自分らしいとのことです。
 
お話を聞いて。 (ゴトウ○○ト)
高井さんのお話はどれも面白く、あっという間にインタビューの時間が過ぎてしまいました。お話を聞いていろいろなことを考えましたが、なかでも特に強く感じたこ­とを3点だけ挙げてみたいと思います。

話を聞くのは面白い
今回が数回目の試みだが、やはり、人からインタラクティブに話を聞くことはとても面白い。今回のゲストの高井さんが特別に話し上手なこと、住職であることなども­大きかったと思うが、純粋に面白かった。ただし、これを消化するのには時間がかかりそうだと思う。高井さんには、時間をおいて、また、角度を変えてもう一度お話­をお聞きしてみたいと思った。

宗教は蓄積されてきた生活の知恵
宗教には「信じるもの」という側面とは別に「生活の知恵の集まり」という側面があるように思った。日本の宗教は特にその色合いが濃いのではないかと思う。
そう考えると、宗教を食わず嫌いで避けるのはつくづくもったいないと思う。避けるのではなく、逆にしがみつくのでもなく、良い距離感を保ちながらうまく仏教と付­き合っていければいいなと思う。
また、なんだか、日本人と宗教との関係は、日本人とお金、日本人とITとの関係と似ているように感じた。意識するしないにかかわらず身近にたくさんの寺院がある­から、良い宗教リテラシーを身につけて適切な関係を築いていくことが人生をより豊かにしてくれるのかなと思う。

おごらずブレず
高井さんから強く感じたことのひとつが「自信」と「しなやかさ」。「いま自分の言ってることが唯一の正解だとは思わないけど、自分はこう考えるんだ」という姿勢­が言葉や話しぶりから感じられた。
僕らに話すときにも「あくまでも一住職が言ってることやで」という断りが入りながら、それでも断言する強さがあったように思う。

最後に、お話をお聞きする中で印象的だった言葉もいくつかあげてみます。

印象的だった言葉
・「石橋は走って渡ろう」
・「家族は大家族であるべき」
・「精進料理といっても粗食は×」
・「煩悩はなくならない」
・「煩悩自体が悪いわけではない」
 
 
感想(やま○○まさき)
高井さんは、終始楽しくお話をしていただき、また、個人的な考えなどいろいろなことをお話してくださいました。 おかげさまで、今まで考えたことのない視点、考え方に触れることができ、多くのものを得ることができました。

例えば、
・大家族論。
・石橋は走って渡ろう。
・生きている人がいかに幸せに生きるか。
・大人から子どもに関わる。
などです。

お話の内容、そして高井さんの器の大きさや存在感など 多くのことに刺激をうけ、インタビューを終えて、うまく整理できない感覚が残りました。 人が食物を食べて消化して成長するように、高井さんとのインタビュー経験も“消化”するのに時間がかかりそうです。

人に会ってお話を聞く、その人個人としての部分に焦点を合わせるということを今まであまりしてきませんでしたが、今回こうやってアイタビとしてのインタビューをしたことで、 新しい経験をしたと感じています。 このうまく整理できない感覚が消化できたとき、 私の日常行動の考え方の選択肢が増えたり、行動が変わったりするのだと思います。 それが、「学ぶ」ということではないかと思います。

高井さんと向かい合っていると、頼もしさを感じました。 揺るがない強さ。受けとめる柔らかさと大きさ。 長年の修行を通して身につけられたものだと思います。これからも、人から学ぶということを通して、高井さんのような人間的な大きさに近づきたいと思います。

(インタビュー日 2011.05.22)

■高井さんについて
勝妙院
今回インタビューさせていただいた高井さんのお寺。
〒533-0007
大阪府大阪市東淀川区相川3-2-3
06-6340-3249

渓心書道教室@勝妙院
勝妙院では、週に2回、書道教室も開かれています。
06-6370-5108
中学生まで 2,800円
高校生以上 4,000円
毎週水曜日(水曜日PM4:00~6:30/木曜日PM2:30~6:30)

金峯山修験本宗 金峯山寺
勝妙院が所属する金峯山修験本宗の公式サイト。

真言宗 - Wikipedia
こちらも、高井さんが所属する真言宗について。


■関連知識
修験道
山に登って行う修行。日本古来の山岳信仰と仏教とが混ざり合って生まれた。
Wikipediaには
修験道の法流は、大きく分けて真言宗系の当山派と、天台宗系の本山派に分類される
現代では、奈良県吉野山の金峯山寺(金峰山修験本宗)、京都市左京区の聖護院(本山修験宗)、同伏見区の醍醐寺三宝院(真言宗醍醐派)などを拠点に信仰が行われ­ている
とあります。
修験道 - Wikipedia
修験道 - 金峯山寺


山伏
山の中を歩き、修行をする修験道の行者。「修験者」とも言う。

捨身行
断崖絶壁から身を投げ出す修行。肩から胴体に太い綱をかけられた状態で、頭のほうから絶壁へ差し出される。

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